麻雀小説 ブログトップ
- | 次の10件

睥睨する一打(デバサイ) [麻雀小説]

そして、大会当日。

それが懇親の大会であっても、勝負である以上、勝たねばならない。

自分の麻雀はひろりんの麻雀。

いつも師匠に後ろ見されていると思い、打たねばならない。

5回戦。

得点の一番多い人間が優勝だ。

1回戦から4回戦まで全てトップ。

残る5回戦もトップをとり、完全優勝を狙いたい。

最終卓は、その地点でトータル2着目のK氏と、目無しの2人。

K氏がトップをとれば、私は2着となる。

だが、各半荘ごとに商品がでるので、トップには意味がある。

わたしは、果敢に攻める。

少しギアが入りすぎているのかな、とも思ったけれど

慎重になりすぎて風下に回ることが怖かった。

最後の麻雀なので、真剣に全力を尽くしたかった。


マンズの下に寄った和了が続くもエラーもなく、南2局の自分の親が落ちるころには43000点を持っていた。

あと2局。

南3局もいなし、オーラスへ。

ドラ八

2着目のK氏の親番を残すのみとなる。

私は、白を仕掛け、

のテンパイ。

親のK氏のリーチ。2段目の捨て牌は

六北⑦4

六も⑦も手出し、4も手出しだ。

私は④をツモリ

⑦を切る。

④⑤⑥⑦⑧北北 チー312  ポン白白白

その⑦を下家がチーした。チー⑦⑧⑨だ。

下家は7000点持ち。

仕掛けたところで、なんの意味もない。

トリプルツモ以外無意味だ。

私は、仕掛け晒された⑦⑧⑨のターツを睨みつける。

「なんなんだ、これは?なんだ、この状況は。

おれがどれくらいの想いを麻雀に賭けているは分かっているのか?

だから、嫌なんだ。本気になればなるほど、その温度差に気分が悪くなる。」

次巡、三を掴む。

親リーの現物である六ワンの筋。

一瞬、もう一枚の⑦に手がかかる。

「このまま、下家に和了してもらうか?そうすれば優勝できる。」

そんな思考が脳裏をよぎる。

意味のない和了での終局。

だが、そんな気分の悪いことをして結果勝ったところで何の意味がある?

ばかばかしい。このまま⑥⑨待ちで押す。

三を切る。

リーチタンヤオ三色ドラウラ、18000点に刺さる。

デバサイ。

完全優勝どころか、優勝も逃す。

冷静に打てていれば、⑦⑧をはずしマンズで受けることができているはずだ。

マンズの下にアヤは感じていたのだし、丁寧に打てば、三色目の残る三は切ることはない。

状況に我慢ができず、辛抱できなかったことが敗因だ。

けれど、意味のない他家の和了でおこぼれトップを貰うくらいなら戦って2着のほうがよい。

そんな暴走気味の一打である。

麻雀から答えを貰った気がした。

「嫌な、麻雀なら打つな」

である。

麻雀ではないものを、あたかも麻雀のように慰み者にしていた私への訓告だ。

他人の姿勢がどうあれ、私だけは牌に謙虚でなければならない。

奇しくもこの半荘を起点にして、麻雀の温度が高い人間が少しずつ私の周囲に集まるようになる。

K氏からは「よい、麻雀でした。感動した。」との言葉をいただく。

それを受け、いや違う、これじゃないんです、もっともっと、よい麻雀を、深い麻雀を打ちたいんです。

と心底思った。

もう一度、麻雀と向かい合おうと決めた。

嫌な思いをする麻雀はもう2度と打つ必要がない。

だが、そのかわり。

あれから、2年。

現在、私の周囲には、牌の声に耳を傾けることのできる人間がたくさんいる。

あの18000点は「冷ややかに麻雀に絶望していた私」への叱咤の一撃だった、と思う。

どんなに努力を積み重ねていても、波が砂の城を攫うように、一瞬にしてその苦労が霧散してしまうことがある。

けれど、もう一度辛抱して積み重ねなおすことができるか、どうか、それをいつも牌に問われている。

現在の私ならば、三は打たない。

いやそもそも白を仕掛けない。受けの牌が準備できるまで面前で構えるだろう。

2年前のあの頃よりも、牌の声があたたかく耳に入るようになった。

20120710205325.jpg

ブログランキングに参加しております。クリック願います。


麻雀 ブログランキングへ

クリスマス→http://wing6877.blog.so-net.ne.jp

睥睨する一打(麻雀大会) [麻雀小説]

優しい日差しが心地よい、初秋のとある1日。

こんな日は、午後のやわらかな時を牌に触れて過ごしたくなる。

半荘1回で充分だな、そう思いながら店へ向かう。

麻雀からはずいぶん離れてしまったけれど、やはりたまに牌に触れていたい。

それが本音だ。

他人によい麻雀を求めるわけでもない、ただ自分のところへおとずれる牌の意味だけを考える。

牌との会話、生存確認というやつだ。

自分は、まだ大丈夫だ、という確認。

半生を牌と共に過ごしてきた自分にとって、牌の意味を考えること、ただそれだけで意味がある。

自分の生きる支柱の確認。

それだけが目的だ。そのノーレートの麻雀店でも事足りる。

他家の麻雀には、何の期待もしていない。

だから自分が満足すれば、すぐに卓を割る。

もう現役として麻雀に向かい合う必要もないし、そんな想いも枯れ果てていた。

自分の麻雀は、師匠であるひろりんと、離別したときに終わったのだ。

そう思っていた。

そのノーレート店の麻雀は、私の求めていたものの対極にある。

牌はコミュニケーションの道具に過ぎず、麻雀の内容など、誰も考えていない。

痛みも想いもない、麻雀。

牌は叩きつけられ、牌の声は蹂躙される。

以前の私ならば、その麻雀の在り様を受け入れることはできなかっただろう。

100人いれば、100人の求める麻雀がある。正解も不正解もない。

そんな諦観が私を包む。

「彼らは彼らで楽しそうにしているのだし、俺には関係ない世界だ。」

「あーこれは打てない」

とか

「ハネマンテンパッてるよ」

とか、

麻雀のゲーム性そのものを冒涜した行為が続く。

麻雀というゲームを、コーラを水で薄めるように希薄にしてゆくと

最後はこんな感じになるのだろうな、そんな感じ。

それでも、月に2・3回は牌を触りに出かけていた。

その間に、よい麻雀を打つなあ、と感じた人間が一人。

けれど、私の知るところの深い麻雀を打つにはメンツは4人必要。

その人間もいずれこの店には来なくなるだろうな、そう感じた。

その日も、いつものように牌を触り自分の中に迷いがないか、確認する。

そうして帰宅しようと料金を払い退店する刹那、店のオーナーから声がかかる。

その店で開催される大会に参加することとなった。

かたくなに断るけれど、どうしても人が足りないとのこと。

なんとなくもうめんどくさくなっていた。

真剣に麻雀に向き合わない奴輩。

麻雀を玩具にしている。私が用があるのは麻雀だけなのに。

もういいや。

このお店での麻雀を無味なモノに感じ始めていた頃だ。

これで最後だな、よいケジメだ。

と考え参加することにした。

最後のご奉公というやつだ。

ただ、打つ以上は優勝しよう、自分も納得できる内容で。

そう思い大会への参加を、頷きで答えた。

402890166.gif

ブログランキングに参加しております。クリック願います。


麻雀 ブログランキングへ

クリスマス→http://wing6877.blog.so-net.ne.jp

卓外戦術。フリー雀荘にて2 [麻雀小説]

ここは、学生を中心とした、点3のゆりかご雀荘。

おぬしのようなピン雀かぶれが、足を踏み入れてよい場所ではないわ!

私は、織田裕二似の若者に、敵意むき出しで挑む。

雀ゴロチックな雰囲気が鼻につくのだ。

私は、まず配牌をとっても、それをすぐに開かず、

他人の手牌を見ているフリをする。

そして、全く理牌をせずに打つ。

リーチをかければ手牌を伏せ、ツモ牌を掴むと同時に発声。

卓上に鋭く叩きつける。

自分のほうが格が上なのだと、ひたすらプレッシャーをかけ続ける。

はっきり言って、「キングオブマナー悪」である。マナ悪無双。

当時は、こういうことも含めて,かっこよい、打てる、と考えていたのだから不思議だ。

だが、私の卓外からのプレッシャーをものともせず、その織田裕二似は、よい麻雀を打つ。

背筋をピンとはり、一糸乱れぬ打牌を続ける。

全ての牌をノータイムで切る。

そして、とにかく 強い。

最初の半荘は、織田裕二似の奴のトップ。

そして、次の半荘。

なにかにとりつかれたように、私におかしいくらい手が入る。

だが、私の「1ソウ待ち国士」も、「トイトイサンアンコー」も、全て織田裕二似のリーチに捌かれた。

織田裕二似を除く他の2人の対局者は、完全にモブキャラになり下がっていた。

そして、私は場に3枚切れのペン③を一発でツモリ、南3局の親番を迎えた。

内心「よくこんなのツモッたなあ」、と驚いているのだが、さも当たり前のように振る舞い

プレッシャーをかける。

点棒状況については、私が織田裕二似より、マンガンくらい浮いていたと思う。

かがみ.jpg

お知らせ

つかさ会

次回は8月11日。 午後12時から、午後8時まで

よつば会にて。

そして、8月18日(土)には、ゲストプロとして

「村田 光陽 様」を招いての対局。勉強会を開催。

2時間、勉強会、3時間を対局。

ツアー選手内田慶塾長も参戦。



14:00から、19:00。参加費用2000円。

会場は本厚木よつば会です。

問い合わせは、下記アドレスに記載のメールアドレスまで。



http://tsumatetsu-777.blog.so-net.ne.jp/2011-10-05
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


てつつまのほうろうまーじゃんき↓(つかさ会案内あり)

http://tsumatetsu-777.blog.so-net.ne.jp/
オムライスつまてつの.jpg

くりっく願います↓


麻雀 ブログランキングへ

ひきこもれ!→http://wing6877.blog.so-net.ne.jp/


ロクさんのチャンタ② [麻雀小説]

みんな、今日のジョジョトーーーーーク!

観たかな?今週末は、みんなで、ジョジョ打ちだ!。

勇気をだして、効果音を出して牌を切ってごらん。

もし、同卓者にジョジョリオンがいたら、必ず食いついてくれるはずだよ。

今週の土曜は、お昼から、よつば回でつかさ会。

三連休なので、日曜日もお昼からRくんを招いて、つかさ会です。

日曜日は、らくゆうです。

じょじょ.jpg

ロクさんは、そのあとも、4,六など、中張牌を、バラ切りしてくる。

一見、国士にも見える異様な捨て牌。チートイの可能性もある。

終局がせまり、卓上の空気が重くなる。

「これは、親のロクさんは、さすがにテンパイだろうな・・・」

私は、そう推察。

完全安全牌を河に並べる。

南家が、牌を切り、親番であるロクさんが、手牌をふせる。

ノーテンだ。

「わははは、ノーテンだよ」

ロクさんは、楽しそうに牌を、流す。

その次局も、その次局も、中張牌から切り出し。

そして、テンパイっぽい雰囲気ではあるけれど、ノーテン。

そんな感じで、南場に突入した。

南場のロクさんの親番も、中張牌のバラ切りから始まる。

場の状況は、小場。

テンパイ、ノーテンの繰り返しで辿りついた南場。

この状況ならば、1000点の和了でも、暫定トップになる。

私は、ロクさんのバラキりの中張牌を、仕掛ける。

2つ仕掛けての1000点の、タンヤオで、和了。

ロクさんの親を流す。

「ほう、タンヤオか」

そう、口にして、わはははと笑う。

結局、ロクさんは一度も和了することなく、その半荘は終わった。

「いやあ、楽しかった」

そう言って、ロクさんはまた笑う。

結局、そのあとの半荘も、一度も和了することはなかった。

全局、ほぼチャンタ。

けれど、一切振り込まず、場にそぐわない牌も切ることなく、

ノーテン罰符だけで、20000点代をキープしての終局。

そんな、ロクさんをひろりんは、優しい眼差しで、見つめている。

ランキング


麻雀 ブログランキングへ

黒雪姫→http://wing6877.blog.so-net.ne.jp/


ロクさんのチャンタ [麻雀小説]

そういえば、いつからだろうか?

私がチャンタという役に興味覚えたのは。

そうだ、あの老紳士の麻雀だ。

記憶が鮮明に蘇る。

ロクさんのはじけるような笑顔。
saki.jpg


その昔。運悪く私は麻雀がお金になることを知った。

麻雀を、他人から点棒をむしり取るゲームだと勘違いしていた10数年まえの私。

その構想に、チャンタと三色は存在していなかった。

そんな自己満足なロマンの為に、1%でも期待値を下げることはできない。

ナンセンスだ、そう思っていた。勝つことが全て。結果が全てだと。

基本、テンパイ即リー。

ツモれるカンチャンをツモ和了して裏ドラを乗せチップを取る。

全ツッパに見せかけて絶対に振り込まない。

オーラス、ラス確定でもリーチを打ち、チップを拾う。

何か文句があるのか?

嫌なら打たなければよい。

仕掛けは、「タンヤオ」と「役牌」

仕掛けている間に、ドラや赤を吸収すれば、打点も稼げる。

自分が和了すれば、誰かの積み上げた期待値を、なぎ払うことができる。

仕掛けても、受けの牌を残し絶対に振り込まない。

後付け、片和了。勝つ為に出来ることは、全て躊躇なく遂行。

そして、一度でも、手順を間違えたら、ラス半コール。

誰かがツキ出してのってきたなら、これまたラス半コール。

誰が強かろうが興味はない、強い奴とは、打たないだけだ。

対局者にどれだけ嫌われようが、それは勲章だと思っていた。

麻雀なんて、ゲスなゲーム、金にならなければ誰が打つものか!

ひろりんに出会うまでは、本当にそう思い、麻雀を憎んでいた。

そんな、暗黒魔王のようなビッチな私が、少しづつ本当の麻雀の尊さと価値を知り

手役というもの、牌の色、形というものを、少しづつ意識するようになる。

チャンタの意味と役目を知る。

その過程で、やはり、私がチャンタに心を奪われたのは、やはり初老の紳士、ロクさんの麻雀だ。

_m_wing4141.png


いつものように、ひろりんに麻雀を教わるため、教室へ。

メンツを整え、さあ対局開始、という刹那、ドアが開く。

「いよう!ひろちゃん」

室内の空気が変わる。

サンタのようなヒゲ。

優しい暖かい笑顔。

そして、思慮深さが伺える柔らかい瞳。

名前は、ロクさん。

会社の経営者、だという。

ひろりんとは、昔、同じ道場の仲間だったとのこと。

かなりの打ち手らしい。

「ひろちゃんと打てるって聞いて、来たよ?」

ロクさんは、そう元気良く、言い放ち、

ひろりんのそばへ張り付き、ニコニコと笑う。

「わしゃ、うちとうなーい」

少し照れながら、ひろりんは続ける。

「いい機会じゃ。あなたたち、相手をしてもらいなさい。

ロクさん、わしゃ、いまこの子たちに、麻雀を教えよる。

いっしょに打ってやってくれんかね?」

ロクさんは、目が線になるほど、ニッコリと笑い

「ひろちゃんの弟子かい。ひろちゃんは、強かろ。神様じゃ。」

と、こぼしながら、そろそろと、卓についた。

私と、ひろりんの次男と、Dいん。

賽が振られ、対局開始。

親番である、ロクさんの第一打は、⑤ピンだった。



くいしんぼうのながすたる→http://wing6877.blog.so-net.ne.jp/

ランキングバー。本当のこと言うと・・・くりっくお願いします↓


麻雀 ブログランキングへ


描き直し!タンピン国士無双 [麻雀小説]

南2局。

画像の捨て牌で、ひろりんが⑤を切ってリーチ。
11.jpg

九①西9⑨五

タンピン系か、チートイ。

ドラの北を二枚持たれている可能性が高い。

我々は、必死で受ける。

ひろりんが、一発でツモらなかったということは、ロン和了狙いだ。

そして、終盤。窮して離したどいんの四枚目の東が、国士無双に突き刺さる。

48,000点。

なぜ?なぜ?

この状況で国士狙いなどありえない。

我々は、狼狽え、ひろりんに問い詰める。


我々の、問いにひろりんは粛々と答える。

もう過ぎ去ったこの1局を完全に再現する。

我々の失策も露呈する。


とにかく、東場から、わしの形はよくない。牌が動いていない。

また、みんなの形もよくない。

全員の捨て牌が、そう教えてくれちょるじゃろ?

強い牌の周りが全然動いちょらん。

南場に入ってからもそう。仕掛ける絵が来ない。

特に、国士を狙う直前の1.2局は、シュンツ手を狙うことが難しいと、牌が教えてくれちょる。

じゃから、親番は、国士とチャンタとチートイ、そして国士の天秤。

何牌がツモッてみるんじゃが、強い数の周りが動かないので、最終的には、国士無双のテンパイ。

配牌で、8種9牌じゃから、国士を狙う。そんなのは麻雀じゃなかろう。

誰にでもできるポンジャンゲームじゃ。そんな楽な麻雀はつまらん。

わしは、そう思う。

もっと、大きく大きく捉えなさい。目の前にある物が全てじゃないじゃろ?

この国士も単なる結果にすぎん。そこに至る過程を大事にしなさい。それが麻雀じゃ。

4枚目の東で、国士無双に放銃したどいん。

ドラといつのチートイも注意して受けていたが安牌がなくなり、迷惑をかけまいと止めていた東を切る。

 今でこそ、「あの東はぬるい」と笑いながら話せるが、当時はたまったものではなかった。

ひろりんの思考を尋ねて、我々は恥ずかしくなる。

和了そのものよりも、努力の積み重ねがすごい。1牌1牌が、とてつもなく重い。

ただ、牌を絞っていただけの自分たちの努力不足を心から恥ずかしく思った。

ひろりんが、なぜ、ノーレートで、そこまで魂を込めてくれるのか、今はとてもよく解る。

ひろりんは、我々に自分の大切な「麻雀への想い」を本気で伝えてくれようとしていたのだ。

この頃の対局は、1つ1つが、もう二度とあいまみえることは敵わない師との、揺るぎない絆となる。


国士テンパイ時も、対局者にチャンタや、イッツーを意識させるように手牌を並べる。

もちろん、和了時には理牌。

↓ランキングクリックよろしくお願いいたします。


麻雀 ブログランキングへ

その恋は実らない!→http://wing6877.blog.so-net.ne.jp/

続きの究極の国士無双 [麻雀小説]

ひろりんの、ご子息と、私と、Dいん。

この4人での、競技麻雀での対局となった。

半荘1回。

とにかく、悔いが残らぬよう、しっかりと打つ。

そのことばかり考えていた。

打てる人間と同卓すると、途端に手が入らなくなる。

私は、ひろりんの対面。北家スタートだ。

重い展開が続く。

僅差の攻防戦。1300点や2600点の和了で、場が進む。

ひろりんは、ほとんど仕掛けず、ノーテン罰符と小さな和了が一つ。

もともと早いリーチや愚形リーチは多用しない打ち方がひろりんのスタイル。

いつも何をやっているのか、わからない、そんな感じだった。

リーチを打てば、ほぼツモ和了されてしまう、いつもそんな感じだった。


そして、迎えた南2局。

忘れられない一局。

ひろりんがトップ目の親。

ドラは北。

このひろりんの親だけは、なんとかしないと。

北家である私に、親番は回って来ない気がした。

暗黙のうちにひろりん以外の三人は、この親を落とすこと、に終始する。

競技麻雀は、60分打ち切り。

ただ、ひろりんもすんなりと和了できそうな状況ではなかった。

私は全神経を集中して、

ひろりんの打牌を見つめる。

私のツモ番。

ひろりんと目が合う。

ひろりんも、私の打牌を見つめていたようだ。

というか、誰も自分の手牌なんて見ちゃいない。

そう、手出しツモ切りを見極めて、

相手の13枚をひたすら考える、その作業に没入していた。

当時、半荘1回200円。

今思えば、この内容であれば、半荘1回10,000円でも惜しくない。

それほどに、熱い対局だった。

2度と戻れぬ灼熱の日々。

我々は、ひろりんの麻雀に、心酔してゆく。

に.png


つかさ会 6月2日  午後1時 よつば会にて。

現在、S場ハウスに向かって、ひたすら歩いてます。

ミノフスキー粒子が濃くて辛いけれど、

明日には、到着するよ、多分。ふっふっふ。


クリックしてください。↓


麻雀 ブログランキングへ

こちらも・・http://wing6877.blog.so-net.ne.jp/

究極の国士無双 [麻雀小説]

満月が歓楽街の外れにある、屋台を優しく照らす。


「なあ、国士無双ってあるだろ?」

くたびれきったサラリーマンがおもむろに口にする。

「ああ、麻雀の役だな。」

となりでカップ酒を齧っていた男が、所作なく返す。

「その国に並ぶ者などいない強者という意味らしいけど、麻雀の役だと少し意味が違うんだ。」

と、続けるサラリーマン。

「麻雀でいう、国士無双っていうのは、弱者に残された最後の希望なんだよ。

使いものにならない19字牌。このてんでバラバラのクズ牌を13枚集めると、最強の役になる。

どうしょうもなくツキに見放された人間への最後の救いの役なんだ。

なんだか、ロマンチックだと思わないか?

最低最悪の不遇な逆境を、最高なチャンスに変えることができる。」

サラリーマンは、誰に伝えたいという風でもなく、小さな声でつぶやいた。

「麻雀っていうのは、人生そのものなのか。諦めなければチャンスは必ず来る。」
IMG_0438.jpg

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


仕事が終わると、その麻雀教室へ向かった。

時計の針は、午後9時10分を指す。

幹線道路を、信号に引っかからないよう祈りながら、車のアクセルを踏む。

私の通っている麻雀教室は、午後11時には終了する。

「半荘一回は、打ちたいなあ・・・」

そう願いながら教室の前に車を停め、教室の扉を開ける。

ご婦人が興じている一般のノーレート卓が、一卓。

どうやら競技麻雀の卓はまだ立っていないようだ。

最悪、今日は後ろ見オンリーになるのかな、とそう覚悟していた私は、安堵した。

今日は、とにかく打ちたかった。

昨日の対局では自らの弱い鳴きで、好牌を散らしてしまった。

今日はいつもとリズムを変えて、重い麻雀を打つ、そう決めていた。

夕方から、気も漫ろだった。

今日は、競技麻雀の生徒が少ない。

もしかしたら、先生と打てるかも知れない。

そう思いながらひろりんの方を見やる。

「久しぶりに、打つかね?」

ひろりんは、抑揚のない声で、私に答えた。

ひろりんは私の先生。

類なる感性で、麻雀の無限の可能性を教えてくれる。

僥倖。

願ってもいないチャンスが訪れた。





現在、閲覧数1桁。激寒ブログ.

麻雀ブログランキング。
クリックしていただけたら、幸いです。
次回こそは、ちゃんとした記事書くからクリックしてください。よろ!
1回だけ、1回だけでいいですから!お願いします。

現在、閲覧数4件(みんなありがとう。)激寒ブログ。
麻雀 ブログランキングへ

ついにあの伝説のは部が始動!!!
こいつは、ぱねえぜ!http://wing6877.blog.so-net.ne.jp/

憩いの雀荘 [麻雀小説]

昔話である。20年ほど昔のこと。

私が、麻雀を覚えて間もない18歳の頃、仲間達とよく出入りしていた雀荘があった。

本来であれば、大学生になっていたはずのその春。

我々はなにやらアテがはずれ、気がつくと望んでもいないのに、残念ながら哀愁漂う「浪人生」となっていた。

まだ、何もかもバブルな、80年代後半 そんな時代だ。

 その雀荘は、そんな肩身のせまい我々を、セット一時間1000円(1人250円)で打たせてくれていた。

しかも、学生サービスという名目で、ドリンクまでサービスしてくれていた。

(正価250円、当時はフリードリンクなんて有り得ない。)コーラか、オレンジジュース。

店のオリジナルドリンクで、オロヤク(オロナミンCとヤクルトのミックス)なんていうのもあった。

 当時、ゲームセンターの脱衣対局麻雀ゲームが、1ゲーム50円。

それがものの数分でなくなってしまうことを考えれば、わずか250円である。

わずか250円で、一時間もリアルな牌に触れるなんて、望外な幸福だった。

4人全員の所持金の合計が3000円にも満たない我々は、いつも長く打てて2時間くらい。

けれども、当時は何物にもかえがたい楽しい時間だった。

お昼ごはんを30円(100円で3つ)のコロッケ一つで済ませている仲間もいた。

どんなに空腹でも、それでも麻雀を打ちたかった。

 麻雀が打ちたくて仕方のない私は、本来ならば麻雀とは無縁の人生を歩むであろう友人もむりやり雀荘に

ひっぱりこんでいた。

はっきりいって迷惑な人間だったとおもう。
 店の入り口に、「スポーツ麻雀」の看板が踊るその店は、入り口から左右2列並ぶ10卓がフリー麻雀。

「ブー麻雀専門店」だ。奥の6卓がセット用の貸卓となっていた。

入店した際、いつも我々は、フリー卓の中央の通路を小さい声で挨拶しながら、小走りに奥の貸卓エリアへ

駆け抜けていた。

奇妙な博打打ちの熱気が漂うフリー卓のエリア。

.我々の存在はあまりにも不釣合いだと感じていたからだ。

  その雀荘の店員も経営者も「浪人生」である我々には、限りなく優しかった。

特に住み込み店員の「Sさん」には、ことの他かわいがられていた気がする。

ピンフの作り方や、チートイツの作り方などは、「Sさん」に教えてもらった。

だが、その「Sさん」も、私のフリー卓への同卓だけは決して許してはくれなかった。

日々、私のフリー麻雀への想いは強くなっていく。

ある日、3万円を握りしめ、「このお金はなくなってもいいから、たのむから打たせてくれ」、と嘆願したこともあ

ったが、やはり、答えはNO.絶対に許してくれなかった。

今、思えば、「若者を博打に引き込んではいけない」という、強い想いがあったのだろう。

麻雀の麻は麻薬の麻。麻雀には麻薬並みの中毒性がある。今でこそ、本当にその意味がわかる。

あの若さでブー麻を覚えていたらとんでもないことになっていただろう。

 そんなある日、仲間より少し早くその店に着いた私は、店の奥、貸卓エリアの椅子に一人、隠れるように座

り、植木の間からフリーの対局を、ドキドキしながら覗き見ていた。

「マルA!」だの「6枚!」だの、意味のわからない言葉が飛び交う。

卓上に出ている点棒の色から察するに、おそらく私の知っている麻雀とは異質なルールであろうことは察し

がつく。

支払いは現金のやりとりではなく、カードのやりとり。

そして、1回のゲームの終了速度が異常に早い。けれど、みんな、生き生きとしている。

見ているこちらもわくわくする。そんな折、突然くぐもった声が、響いた。

「おい。ちょっと、トイレ。誰かおらんか?」

 ブー麻雀を打ちなれていそうな、おっさんが、立ち上がりおもむろに声をあげる。

この店では珍しいことだが、このとき、店員の立ち番がいなかった。

本走で対局中の他の店員は、入り口近くの卓に入っており、この「おっさん」の声は届かなかったようだ。

「Sさん」の姿も見当たらない。

「おい。にいちゃん、ちょっと トイレの間、たのむわ。」

 私に向けて発せられた言葉。まさに僥倖。私は、大きく頷くと、大慌てで卓についた。

対局者は、「スナックのママ風なご夫人」と、「競輪場にいそうなおっさん」と「、パチンコ店にいそうなじいさん」。

「こりゃちょろいわ。大物手炸裂させてやる」私は、勝利を確信していた。

麻雀を覚えて2ヶ月弱、ゲームセンターの2人対局麻雀では、何度も役満をあがったことがあるし、本屋で麻

雀の本を読み、役もしっかり覚えた。

十三不塔なんていうのまで、知ってる。符計算だって5200.7700なら大丈夫だ。

仲間内での対戦成績だってすこぶる良い。自信は猛烈にあった。

 配牌をとると、赤、赤、赤、でまっかっか。シャア専用の手牌だ。

速攻で(通常の3倍の速さで)ハネマンをテンパッた。

どんな形だったかまでは、20年たった今ではもう覚えてはいない。

ただ、赤くて、高くて、宝石のようにキラキラしていて。

牌の両端を握りしめて、ロン牌が出てくるのをドキドキして、キョロキョロしながら待っていた。

トイレから戻ってきた時の、「私に代走を頼んだおっさん」の笑顔が浮かぶ。

「そうだ、このハネマンをあがって後から来る仲間に自慢しまくってやろう。」そう思った刹那。

声がする。

「おい、あんた、それ、あがったら駄目やないね!」(あがってはいけないよ)
2011091322450000.jpg
聞き慣れた「Sさん」の声。

「代走を私に頼んだおっさん」がトイレから戻ってきた。

なんだか、ものものしい空気になってきた。私は、こわくなってきた。

とんでもないことをしてしまったのだろうか?

「Sさん」は私に、

「いいから、あっちにいっときなさい」(あっちへいってなさい)

そういって、私を貸し卓エリアに追いやった。

遠目に、ひたすら客に謝っている「Sさん」の姿が見える。

私は、何がなんだかわからなかった。ただ、場は、穏やかに収まったようだった。

暫くして、私の仲間がやってきた。私はなんとも惨めな気持ちで、仲間といつものように麻雀を打つ。

いつものように、半荘2、3回だろうか。本当に放心状態。理由がわからなかった。

 仲間との対局を終え、二時間のゲーム代500円を払うべく、店のカウンターへ向かうと、「Sさん」が店の看

板を片付けていた。私が口を開くより早く、

 「あんたには、まだ、ブーは早いよ。」

とやさしく微笑んだ。

 8000点持ちのブー麻雀では、人をとばしての、終局(3人浮きでの終局)は、チョンボとなる。

チンマイ。おそらく、私の赤いハネマンは、出アガリチョンボだったのだろう。

  私は、それ以来、10年、ブー麻雀を打つことはなかった。

我々はその雀荘へ、大学へ合格した後も、社会人になった後も、通いつめることになる。

セットで打つときは、いつもその雀荘だった。

他のフリー雀荘で「リーチ麻雀」を打つことがあっても、セットで打つときだけは、たいていその店だった。

いつしかその店は、本当の意味で、我々の憩いの場となっていたのだと思う。
 そ
の店も、今はもう、ない。

 目を閉じると浮かぶ、原風景。はからずも思い出す。

今では、もう遥か遠く離れ、もう卓を囲むことも叶わなくなった、大切な仲間の声が、私の心に響く。

深く深く染み込んでゆく。

 もう一度、一緒に打ちたいと想う相手がいること。

もう一度、一緒に打ちたいと想ってくれる相手がいること。

これに勝る幸福はない。

いままでも、いまも、そしてこれからも。

- | 次の10件 麻雀小説 ブログトップ