睥睨する一打(麻雀大会) [麻雀小説]

優しい日差しが心地よい、初秋のとある1日。

こんな日は、午後のやわらかな時を牌に触れて過ごしたくなる。

半荘1回で充分だな、そう思いながら店へ向かう。

麻雀からはずいぶん離れてしまったけれど、やはりたまに牌に触れていたい。

それが本音だ。

他人によい麻雀を求めるわけでもない、ただ自分のところへおとずれる牌の意味だけを考える。

牌との会話、生存確認というやつだ。

自分は、まだ大丈夫だ、という確認。

半生を牌と共に過ごしてきた自分にとって、牌の意味を考えること、ただそれだけで意味がある。

自分の生きる支柱の確認。

それだけが目的だ。そのノーレートの麻雀店でも事足りる。

他家の麻雀には、何の期待もしていない。

だから自分が満足すれば、すぐに卓を割る。

もう現役として麻雀に向かい合う必要もないし、そんな想いも枯れ果てていた。

自分の麻雀は、師匠であるひろりんと、離別したときに終わったのだ。

そう思っていた。

そのノーレート店の麻雀は、私の求めていたものの対極にある。

牌はコミュニケーションの道具に過ぎず、麻雀の内容など、誰も考えていない。

痛みも想いもない、麻雀。

牌は叩きつけられ、牌の声は蹂躙される。

以前の私ならば、その麻雀の在り様を受け入れることはできなかっただろう。

100人いれば、100人の求める麻雀がある。正解も不正解もない。

そんな諦観が私を包む。

「彼らは彼らで楽しそうにしているのだし、俺には関係ない世界だ。」

「あーこれは打てない」

とか

「ハネマンテンパッてるよ」

とか、

麻雀のゲーム性そのものを冒涜した行為が続く。

麻雀というゲームを、コーラを水で薄めるように希薄にしてゆくと

最後はこんな感じになるのだろうな、そんな感じ。

それでも、月に2・3回は牌を触りに出かけていた。

その間に、よい麻雀を打つなあ、と感じた人間が一人。

けれど、私の知るところの深い麻雀を打つにはメンツは4人必要。

その人間もいずれこの店には来なくなるだろうな、そう感じた。

その日も、いつものように牌を触り自分の中に迷いがないか、確認する。

そうして帰宅しようと料金を払い退店する刹那、店のオーナーから声がかかる。

その店で開催される大会に参加することとなった。

かたくなに断るけれど、どうしても人が足りないとのこと。

なんとなくもうめんどくさくなっていた。

真剣に麻雀に向き合わない奴輩。

麻雀を玩具にしている。私が用があるのは麻雀だけなのに。

もういいや。

このお店での麻雀を無味なモノに感じ始めていた頃だ。

これで最後だな、よいケジメだ。

と考え参加することにした。

最後のご奉公というやつだ。

ただ、打つ以上は優勝しよう、自分も納得できる内容で。

そう思い大会への参加を、頷きで答えた。

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