圧倒的なちからの差 [閑話休題]
西風荘で過ごした時間は、わたしにとって
実践麻雀を勉強する場となった。
ひとがいて、お金がからんで
それを超越して、麻雀が存在する。
自分の思考は、「自分だけの狭量な思考」でしかない、
そういうことを学ぶことができた。
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店にかけてある鳩時計。
年季のはいった文字盤はローマ字。
時計の針が、午前1時を指す。
ぼーんと鳴った。
「あと、一枚にしますか?」
ますたぴょんがスタイリッシュに、尋ねる。
同卓していたジャンごろ風の男は、
点数表をみて、「それでよい」と頷く。
自分がプラスであることと、
私がマイナスであること、この2点を確認していたのだろう。
一枚というのは、おそらく点数表、一枚。
点数表のマス目が、6マスだから、あと半荘6回だ。
すこし、回数がある。
それでも、三人麻雀だからものの2時間ほどで、終わるだろう。
とにかく、この6回でプラスに転じる必要がある。
まるAのトップを最低でも3回取る必要がある。
(まるAというのは、一人浮きのトップ。大きなプラスになるんだよ。)
ゲーム代は、仕方ない。
とりあえず、最悪ゲーム代までのダメージですませたい。
その残り6回の半荘の、1回目。
打ち方を変えよう。
私は、手牌に組み入れるだけで、1000点となる一と九をとにかく切らないようにする。
そうすれば、私の手牌のほうが値段が高く見えるだろう。
だがこの一見「賢明」にもみえるこの戦略にはおおきな落とし穴があった。
そもそも一九など、チャンタを絡めない限り、ほとんど使えない牌。
基本完全先付けのルールである三人打ち麻雀では、78や23のターツはチャンタには向かない。
はっきりいって使いにくいのだ。
抱えると当然、手牌の進行が遅れ和了に結びつかない。
どうすればいいんだ。
けれど、牌に恵まれ、なんとかトップ目でオーラスをむかえる。
ますたぴょんの先制リーチがかかる。
このリーチに打ち込まなければ、私はトップ。
三人麻雀は、ツモでは点差があまり縮まない。
このお店のルールはツモリ損。
マンガンツモは2000、4000なので、6,000点しかもらえない。
私の持ち点が、
45,000点くらい
リーチ者ますたぴょんが2着目で
27,000点くらい。
倍満をツモられたとしても、16000点しか点差は縮まない。
だから、直撃を避けておけばよい。それがマストだ。それでトップだ。
ハネ満以上の直撃だけを避けておけばよい。
場に一枚打たれている北の手出しのリーチ。
三人打ちは安全牌を抱えることが少なくなりやすい。
けれど、さすがに手出しの北でのリーチは、シュンツ形のテンパイである可能性が高い。
また、チートイであれば、北より優秀な牌を待ち牌するだろう。
ここは、打ち込んではいけない。打ち込まなければよいだけだ。
私は手の打ちに固めたアンコウ九ワンを見つめる。
場に一枚も出ていない九ワン。
これを三枚下ろす。
そうして、あとは、ただひたすら我慢あるのみだ。
九ワンを切る。
ここで、九を切ることができないなんて、ブレまくりもいいところだ。
なんだろう、うまく表現できないけれど、高いところから落ちるような感覚が体を包んだ。
けれど、そういう感覚だけで九ワン切りを止めることはできない。
これが一番安全なんだ。
「ロン」
九ワンに声がかかる。
リーチ一発チートイ赤。
一一九②②2233(赤)55南南
こんな感じの13枚にささる。
8,000点でも一と九でプラス4,000点で、合計12,000点。
直撃をくらう。
手の中の九ワンを狙われた。
心の中まで読まれている、そんな感覚。
「裏ドラは必要ない変わりましたね。」
半泣きで、点棒を払いながら口にする私に、上品に微笑みながら
ますたぴょんは裏ドラをめくる。
のるな~ のらないでくれ~
でも、こういう時って裏ドラ乗るのよね。
サンマは牌の種類が少ないから、ただでさえ
裏ドラは乗りやすい。
案の定、裏ドラがのっていて、12,000点は16,000点。
首も切れた。
30,000点以下だ。
完全にオリに回ったつもりで打ち出したアンコウからの九がチートイにささり、吹っ飛ぶ。
最善手が最悪の結果を招く。
無理だ。
これは、完全に力の差だ。
勝てないよ。
こころがおれる。
それでも、何か方法はないか、考える。
考えようとする。
マイナスが止まらない。
もはや思考する力は私には存在していなかった。
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現在なら、少しわかる。
見なければならないことは、自分の手牌とか
自分がトップを取ること、とか
そういうことではない。
他家が、何を考えているか?だ。
その「麻雀への捉え方」が変わらない限り
結果をだすことなんて、できないだろう。
元祖 パラロス↓
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