捨て牌の濃度 [かふぇ・LUCK!YOU!]

夏の終わり。
久しぶりのフォン-アツギの夜。
このまま帰宅してもよいけれど、「ちょっと美味しいカフィ」を嗜みたくなり、久しぶりに、カフェ「luck!you!」へ向かう。
カクテルグラスで運ばれてくる「ウーロンティー」は、1日の疲れを労ってくれる。
カフェ「luck!you!」のマドンナ、マダムゆうこりんからグラスを受けとる。
淡いグラスのブラウンの向こうに、見慣れないお客さんの顔が見えた。新人さんかな?

南場の深いところ。親番のその新人さんの捨て牌が色濃く特殊で興味を引く。
タンピン系ではない。七対子にもチャンタにも見える厚い河だ。濃い。
「リーチ!」ノータイム発声。萬子の中張牌手出しのリーチ。
こういう親リーチには、自身の手役が勝負攻撃ではない場合には、現物以外は切らないほうがいい。三暗刻とか四暗刻の可能性もぬぐいきれないからだ。異様な捨て牌。南場。親リー。危険な要素ががっつり含まれている。
親番の対面、週末のみタクシードライバーを営んでいる常連の「うっかりもりべえ」が、うっかり親リーチの河に浮かぶ6ソウのスジを頼りに、うっかり9ソウを切る。
命知らずな一打。勝負手だったのだろうか?
うっかりも、うっかりしずきると大変なことになる。
ロンの声がかかる。
一ワンと9ソウのシャボ。
リーチ東の4800点だ。
もりべえは、深海に消えた。
リーチ宣言牌の萬子を手の内に残して、メンホンに向かう選択肢もある。けれど、ノータイムでのリーチだった。逡巡のない外連味のない打牌選択。一発と裏ドラのあるルールだ、ということ。また8巡目という巡目を考慮したならば、ツモって32000オールが見込めるのだから、充分だ。打牌スピードと所作。打ち慣れている、おそらくフリー麻雀の熟達者だな、と感じた。
常連がひとり卓をはずして、店のマダムゆうこりんから、卓入りを薦められる。自分にとっては、1日1半荘が慎ましやかで大味にならなくてよい。
最高のカフェと1半荘。
上家に座る新人さんとの初対局だ。どういう麻雀を打つのか、楽しみだ。

南入りするまで、対局に大きな動きはない。上家も仕掛けはなく、ただその捨て牌は濃くタンピン系+三色、チャンタ系+一通がみえる。
手役を重視している可能性が高い捨て牌だ。自分は下家だから、仕掛けてその仕掛けへの対応をはかる、ということも考えたけれど、せっかくの半荘1回の対局のなかで、1局を捨てて相手の打ち筋を伺うことは、もったいない気がした。対局者の麻雀を伺うよりも、目の前の手牌とやるべきことを大切にしたい。
南1局。北家となる上家の新人さんがはじめて無スジの5ピンを切ってリーチを打った。ピンフ三色?結局和了形を見ることができなかった。
南2局。西家となる上家の新人さんが今度は先制リーチ。七対子もありそうだけれど、三色もありそう。もう何もかもありそう。先ほど観戦していた4800のイメージが強すぎる。
親番を落とした私の手牌も勝負をするに充分に価値のある形。ただ、プカリと4ソウが浮いている。リーチの河にはマンズの4、ピンズの6も飛んでおり、三色もみえる。ただ、数牌が多く飛びすぎている感じはある。七対子の可能性もあるし、最高で四暗刻の可能性まである。じっくり煮詰めた感じのする10巡目のリーチだ。新人さんが面前重視で最終形を求めて組んでいるのであれば、どう転んでも8000点くらいまでありそうだ。考えだすとキリがない。勝負をするのであれば、まだ修正できる局数の残っている南二局、そう、今しかない。
よくわからないものに怯えて「自分で自分のチャンスを潰すこと」だけは、やっていない。4ソウを切ってリーチ。「ロン!」用意されていたかのように振り込むことになる。
リーチ、役牌、裏ドラ1枚。一手代わりでの三色を孕んだ13枚に私の4ソウが吸い込まれる。
「手変りを待たないで即リー」。必ずしも最高形を最終形として目指しているわけではないのか?
確かに、三色の変化を待って、三色目のテンパイを組めたとしても、高目低目のあるテンパイにしかならない。フリテンリーチを打つ必要があるわけではない局面なので、即リーは理にかなっている。私なら即リーを打つ。
 やはり、面前麻雀は、手役の可能性がたくさんありすぎて読みきれない。仕掛けないでいることで、確定情報が落ちにくく、選択肢をたくさん持つことができる。
そして、何よりも一発裏ドラルールの最大のメリットとして、リーチを打つことができる。
 いただいたカクテルウーロンティーの氷も溶ける頃、対局は終わる。
 面前麻雀には、面前麻雀で戦いたい、相手の土俵で戦いたい、とそう思わされる対局だった。手牌を熟成させている感じが、悪くない。大切に育んでいる感じがよ悪くない。濃い捨て牌は想いが込もっていて悪くない。

 そよぐ夜風に秋の気配を感じながら、やっぱり、いろんな人と麻雀を打ちたいな、と思う。
他人の麻雀を考えることは、楽しい。
 1000人いれば、1000種類の麻雀があるわけだから。そう考えると、やはりどこまでも、麻雀の未来に楽しみは尽きない。

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