麻雀。 [麻雀小説]

 わくわくしていた。

やっと、自由になれる。

はやく、大人になりたかった。

自由ということは、責任を伴うということ。

無責任に自由に過ごしていると、やがて、責任を取らされてしまう、ということ。

そんなこと、微塵も考えてなどいなかった。

とにかく、好き放題に生きたかった。

全てが、誰かの思いやりの結果であり、

世の中そんな風にはできていないことを、思い知るのは

それから、10年後のことである。

高校の卒業式が終わって

友人に家で、はじめて麻雀を打つ。

はじめて牌に触って、その存在感に圧倒された。

役なんて知らないけれど、とにかく楽しかった。

役なんてしらないけれど、

なんかこう、大人の仲間に入ることができたみたいで楽しかった。

ほんのわずかな時間だったけれど、夢のように楽しかったことを覚えている。

なんだか、いつの間にか、セピア色の思い出になってしまっていたあの頃。

麻雀と出会わない人生なんていうものが、自分の存在していたことさえ、怪しい。

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