深夜1時からの対局

勝てばよい。

勝つことだけを目的として
他人の嫌がることを最優先する。
自分のいらない牌は
切りまくるけれど、
絶対にふりこまない。
三色?
イッツー?
美しいよね。
でも、和了できないなら
意味がない。
手役への憧れはいらない。
麻雀は自分が和了できれば、失点はない。
他家を和了させなけれはいい。
私の打牌で、他家が
手順を誤るのであれば、
それはとても効果のあること。
そう割りきったあとの
私の成績は、良好だった。
成績をつけ、
同卓者のクセを覚え
帰宅後、ノートにまとめる。
同じ相手と打ち続ける限り
目立つことなく結果を出せた。
不ツキのアヤを感じれば、
もうその日は店じまい。
ツイているときは回数を重ねる。
「身勝手な振る舞い」
でも、ルールに違反はしていない。
とにかく、お金が目的だった。
勝つこと。
勝つ為には負けないこと。
麻雀での副収入がなければ
明日もない。
たくさんいる常連客。
みな楽しそうに打っている。
みな、「麻雀」を楽しんでいる。
けれど自分はそうではない。
「麻雀を打つこと」ではなく、
「お金」を目的にしていた。
だからこそ、
お金が目的と悟られぬよう、
目立つ振る舞いは控えていた。
あまり負けてないひと。
と思われることがベスト。
いつも勝ってる、
と思われてはいけない。
身勝手な麻雀は、
嫌われこそすれ、
許される。
麻雀は、みな身勝手なもの。
その身勝手の責任を
お金ですませる。
けれど、だからこそ
小さくとも「勝っている」と
思われることだけは避けたい。
同卓拒否をされてしまえば
元も子もない。
ラスは引かないこと。
それと、ぶら下がりの2着
これを激しく意識する。
降着することはとにかく避ける。
南2局からの、
2着狙いなんて、常套手段だ。 2着にぶらさがることは、
目立たずに勝つためには、
ある意味トップをとることよりも
大切だった。 2着3回、トップ1回は、
トップ3回、ラス1回より
価値があった。
この店さえあれば、
なんとかやっていける。
常連さんたちが、このまま
ずっときてくれれば
大丈夫だ。
 その日も日当分?を稼ぎ、
雨足の強い帰路を気にしながらも、
私はラス半コールを入れた。 店員2人入りでの、
その日最後の対局。
ゲーム代を先払いしようとした刹那、
店のドアが開いた。
「こんばんは。」
大きな影が動く。
 「打てるじゃろうか?」 声の主は、
山のような大きな体をしていた。 人の良さそうな顔つきだが、
目だけが妙にギラギラとしている。 「もし、邪魔でなければ、1.2回
遊ばせてもらえんじゃろか?」
そう続けるその男に、
店員は「どうぞ」と席を譲り
ルール説明を始めた。
「レートは・・・」そう口にする
店員をその男は遮る。
「説明はええ。また、
わからんことがあったら、
教えてつかあせ」 謙虚なのだかなんだか、
とにかく、私は、
その男のことが気にいらなかった。
「レートもルール説明も無用とは、
何様だ。偉そうに!気に入らない!」
そう思い対峙する。
今日の私は、思いのほか、
状態がよい。ツモリ続けてやる!
俺の楽園を荒らされてたまるか。
奇妙な闘争心にとらわれたまま

深夜の対局がはじまる。

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NatashaGlalo9409

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by NatashaGlalo9409 (2020-08-11 12:13) 

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