お金が欲しくてフリー麻雀に通っていた。
痛みのない麻雀なんて麻雀じゃない。
命より大事なお金がかかっている。
小銭を追いかけて、赤牌で殴り付け
か細い明日への希望を紡ぐ。
そんな自分に、師匠は麻雀の苦しいけど楽しい、
そういう魅力を教えてくれた。
ゲームではないホントの重さ。
お金を賭けることすら許されない濃度、深度。
「あなたが本気で望むなら、
ワシがあなたにだけ麻雀を教えてあげる」
自分は、きっと本気で望んだのだ、と思う。
本当に本当に知りたかったのだ、と思う。
朝から晩まで麻雀のことばかり。
目を閉じれば、牌が踊る。
麻雀以外のことは、全く考えない半年が過ぎる。
師匠に、「プロになりたい」と相談する。
「もっと強いひとたちと打ちたい」と。
「肩書きがなければ、よい麻雀が打てないのなら
あなたとの付き合いはこれまでだ。」
と一蹴される。
そして、私の名前を呼び、
「あなたが、よい麻雀を打ち続けていれば
あなたの周りは、あなたと同じ気持ちで、
よい麻雀を打ってくれるひとでいっぱいになる。
ワシが約束する。」
あれから、幾星霜。
たくさんの邂逅の果てに、たどり着くべき
答えがほのかにみえる。
自分は、本当に麻雀が好きなのだ。
だから、まわりに麻雀が好きなひとがいてくれる。
師匠の言うとおりだった。
そして、思い知る。自分は
麻雀が好きで仕方なくてたまらない
そういう人たちのことが好きなのだ。
たくさんの麻雀を見させていただいて、
そのひとの麻雀への想いがわかる。
ウソかホントか。どの深度か。
わかりたくなくても、わかってしまうのだ。
愛しいほんとうのかけら。
同卓する度に、いつも思う。
少しは、役に立てているだろうか?
師匠のように、少しは、ほんの少しでも
鏡となるような麻雀が打てているだろうか?
物語はもう幕引きのそばだけれど、ここにきて
灼熱の温度を持った若者たちと出会う。

そうだ。
まさに夢中。
その様子が溜まらなくまぶしい。

人生の全てを麻雀に捧げる。
麻雀を好きな人達に捧げる。
それでよい、と思うようになった。
だって、みんな果てしなく「よい顔」をしている。