違和感には理由がある。


かならず。


美味しいカフィーが飲みたい。


いやいや、そうではない。


よい麻雀を打って、美味しいカフィーに変えるのだ。


くたびれ果ててはいたけれど、


もし、自分なんかと打つことを楽しみに


してくれていたら、と思うと、体は動く。


いつものカフェへむかう。


ウワサにきいていたKさんと同卓。


とにかく、賑やかだ。正直、しゃべりすぎだ。


手役の進行、打牌の理由、


ひっきりなしにしゃべっている。


けれど、悪意はなく、楽しくて仕方ない、という様子。


「麻雀を打てることが、楽しくて仕方ない」


そういう雰囲気に嫌な気持ちはしない。


麻雀というゲーム性は、完全に破壊されるけれども


清濁合わせて呑んでこそ、知りうる楽しみもあるだろう。


全身全霊をかけて、目の前の対局をこなすだけだ。


Kさんは、運動会の応援席のような賑やかさだ。


けれど、13枚でしっかり打つ麻雀。


捨て牌にも意志がある。


しゃべりで損をしている。


安全そうな牌を切るときには騒いで、


本当に勝負するときには、音が消える。


そういうタイプであることがわかった。


昔のフリーにたくさんいたタイプだ。


南3局、親番。


あんなに賑やかだったKさんが


五ワンを切るときに、妙に静かだった。


静謐、というイメージ。


凪。


コンマ何秒だけれど


明らかな違和感を感じた。


この半荘でみせたことのない雰囲気。


??なんだ?


河をみても、高得点は落ちていない。


あるとしたなら、ぎり四暗刻だが、


手出しの五ワンは、あきらかに


リャンメンターツを意識している牌だ。


7700のテンパイと同時に、場へのプレッシャーなために


抑えていた、場に1枚切れの中を切る。


「32000」


Kさんの四暗刻単騎にぶっささる。


なるほど。


静かになっていた理由は、役満。 


そこまで推察できなかったけれど、


あのKさんの違和感しかない静けさを


信じるのであれば、危険性のある牌は打たない。


中を止めることは、できたはずだ。


同卓者の癖や判断の傾向は、揺るぎない。


それを汲み取り、打牌判断に使用するのが


わたしの培ってきた戦術のひとつだ。


全く、乗れてないな。


その日は、カフィを口にすることなく


帰路につくことにした。