駅前。


パチンコ屋や雀荘が並ぶその通り。喧騒が逆に心地よい。


老舗のパチンコ店の前に「東京リーチ麻雀」


の赤と黄色のハイカラな旗がはためく。


前から気になっていた。なんだ、東京リーチって?


その日は、スロットの調子がよくめずらしく


瞬間財布がパンパンだった自分は、意を決して


東京リーチ麻雀へ凸することにした。


勇気をふりしぼり、東京リーチ麻雀の旗をめくり


その先の地下室へ続く階段を降りる。


すえた匂い。


煙草の嫌な匂い。 


胸ポケットには雑に丸めた札束。 


さっきパチンコ屋さんで万札を3枚千円札に両替した。


これがなくなるまで打とう。


そういうアウトローな感じがまたそそる。


完先で麻雀を覚えた自分ではあるけれど、


食いタンのあるルールが好きだった。


仲間内の麻雀も完先。


街のフリーもほとんどが完先。


東京リーチ麻雀、という言葉が


垢抜けていて不思議と、かっこよく心に沁みる。


地下へ続く階段の突き当たり


汚い重たい扉を開けて店内へ。


たちの悪そうな店員が、


「を?いらっひゃいませー」と嬌声をあげる。


硝煙のような煙草の中、卓へ案内される。


知らない店で打つことは楽しい。


こういうフリーできつい麻雀を打って、そのあと


また仲間内のセットを打つとまた楽しいのだ。


自分が入った卓は、ギスギスしていた。


自分と歳の違わないくらいの青年が


チンピラに言いかがりをつけられている。


「おまえ、生意気なんや!ええかげんにせえや?」


「あー?なんか文句あるんか?」


青年も十二分にたちが悪い。


なんか、聞き覚えがある声だな。


青年を見やると、中学の時の同級生Tだった。


野球部だったTは、口は悪いけど優しい男だ。


Tは、卓につこうとする私をみやり、


目を大きく見開いて


「おう、おうおう、ひさしぶりやのう。おまえ、

 

麻雀なんか打つんか?」


と嬉しそうに笑う。


「ここは、ガキが来るような場所やないんやけどのう!」


チンピラが、煙草の煙を私に吹き掛ける。


「やかましいのう、あ?」


Tがチンピラの襟首を掴む。


店員が、めんどくさそうに


「喧嘩なら表でやれ!打たんなら、出ていけ!」


とチンピラとTの方を掴む。


舌打ちをしながら、麻雀がはじまる。


Tのことは大好きだから、一緒に打てることは


嬉しいけど、こんなギスギスした空気になるとは。


さすが本場東京の麻雀は、すげえなあ、


と少し感動を覚えた。


これが、きっと鉄火場ってやつ?


仲間内点5大好きな自分にしては、


この店のレートは高レートだ。


いつもの4倍のレートやわー。


ドキドキがとまらない。