赤有り麻雀の戦い方 [麻雀小説サークル]

このお話はフィクションです。


全ては 夢の中の出来事のようだ。


賑やかなパチンコ店内ではあったのだけれど


その喧騒が逆に私を落ち着かせた。


1万でも勝てれば良い、


そんな風に最初は思っていたけれど


クルクルと回るリールを眺めながらも


やはりどこまでいっても


考えていることは、麻雀のことばかり。


考えたくもないはずなのに。


青年の麻雀について、考え続けていた。


青年が親リーチにゼンツ。


運良く青年が赤5ソウをツモる。


単なる前にしか進めない戦車みたいな麻雀だ、と思った。


赤ドラ単騎で曲げるなんて、厚かましいにもほどがある、と。


けれど、別の考え方をするのであれば、


赤ドラ単騎にすれば、赤ドラを振り込まずに


和了すれば高得点とご祝儀がもらえる。


そして自分のリーチも振り返る。


三四五(赤)③③③⑤4445678


ドラは南。


北家になったわたしは⑤を切ってリーチを打つ。


待ちの多さでの⑤切りだ。


その2巡あと、青年が⑧を横に曲げて


追いかけの親リーチ。


わたしのツモ牌は⑤。


真っ赤に染まった⑤。


親番である青年に一発で放銃。


一二三②②②④⑥678南南


リーチ一発ドラ3


ウラドラ・・・


ウラドラの表示牌には①ピンが。


リーチ一発ドラ3ウラ3.


飛びと、チップ5枚。


三四五(赤)③③③⑤4445678


これも、赤のフォローを考えれば


8ソウ切りのほうがよかったのか?


いや、そんなばかな。



東3局の青年のリーチも気味が悪い。


2ソウと8ソウが河に飛んでいる。


そこに7ソウ切りのリーチだった。


一二三②③④⑦⑧⑨4446


スジの3枚目のカン5そうで振り込んでしまい


ウラドラの表示牌に4枚目の4ソウがいて


18000の飛びとチップ4枚。


上手に打とうとして、大失策だ。


・・・・・


思い返せば、赤牌でおかしなことになっている。


赤牌で、取り返しのつかないことになっている。


わたしは、いつも、赤やドラは「おまけ」だ


おもって打っている。


赤牌には期待をしない。


なんとなく、赤に意識を奪われることは


麻雀の本当の努力ではない気がして。


格好悪い気がして。


「卓上に落ちるおおきな偶然。」


赤で振り込めば運が悪いだけ。


・・・・・


でも、現在打っているのは


「赤がお金になる」そういう麻雀だ。


自分が心の底で憧れている


「偶然の少ない美しい麻雀」ではない。


血のような真っ赤な赤牌で


他人の財布からお金を奪う。


お金を奪い合う戦いなのだ。


事実、敗北のなか、


現在の自分は「クルマを売るはめ」になってしまった。


そこが間違っていたのか。


自分は甘かったのだ。


上手に器用に結果だけを欲しがっている。


ボクシングでいえば、足を使って


器用にジャブだけで勝とうとしている。


いや、負けないようにしている。


命を賭けた戦いに安全な場所などないし、


器用に、うまぶって「魂ののっていないパンチ」を


いくら打ったところで意味はない。



「赤を使って相手の息の根を止める・・・」


そうだ、重い渾身のストレートが必要だ。


そして、その為には、赤牌を味方にする必要がある。


赤牌を味方にするためには


同卓者が赤牌をどのように扱っているか


そのことをよく理解する必要がある。


金ならある。


どうせ一度は失くなってしまった金だ。


運に任せてパチスロ代に飲ませるくらいなら


もういちどだけ、あの戦場に。


夕暮れどき。


私は、現金を握り締めて


雀荘の前に立っていた。


手牌に赤牌と場の状況の重なりを感じたなら


渾身の力で振り抜く。


強い形。


強い牌。


強い場の状況。


勝負ところに全てを賭ける。





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敗北の先に

このお話はフィクションです。


ほんとうのきもちはないしょでござるよ、けんいちうじ。


溶けるように眠って、目が覚めると夕方だった。


わたしは、金策に頭を巡らせる。


もう、2万や3万の小銭ではどうにもならない。


わたしに残った最後の財産といえるようなもの。


ある。最後にひとつだけ。


駐車場に止めてある、動かなくなった外車。


正規ディラーのショールームで心を奪われた。


毎日、ショールームをのぞきにゆく。


納車の日は天にも登る気持ち。


中古だけれど、その車の全てが本当に大好きで、


納車の日は嬉しくて車の中で眠った。


ありったけの現金と、


金利の高いローンを払う。


ようやく手に入れた車。


17インチのアルミを履かせいろんな場所へいった。


絹のようなエンジンは滑らかに回りで


その走りはどこまでも魅力的で、わたしの心を魅了した。


動かなくなってしまっていたけれども、いつか修理して


また、一緒に走ろうと、そう思っていた。


けれど、もう猶予はない。


大丈夫だ。


車は現在乗っているロータリーがある。


そもそもこんなに切羽つまってるのに


車を2台維持、なんてできるはずがないんだ。


「負ける、というのはこういうことなのだ。」


自分の不甲斐なさのせいで、


全てを奪われてしまう。


私は、車関係の仕事をしている旧友に連絡をして


車をひきとってもらうことにした。


2日後の夕方、死神のようなレッカー車がとまる。


車検切れのわたしの車は、


まるで「ドナドナ」の牛のように


運ばれてゆく。


友人は、余計なことは一言も言わずに


わたしに、お金の入った封筒を手渡した。


そして、去り際に


「元気出せや。


クルマなんか、また景気がよくなってから


買い戻せばよかろうもん。」


と、あまり上手ではない笑顔を見せた。


封筒をあらためる。


20万。


400万近くかかったクルマが


たったの20万。


車検も切れて、10万キロオーバーのクルマでは


これが中古車の売買では相場なのだろう。


とにかく、面倒な手続きも必要なく


現金を手に入れることができたことは


本当にありがたい。


様々な払いをして、結局手持ちは


12万円くらいになった。


この12万が最後だ。


どうするか。


正直、あの青年には勝てる気がしない。


お金に余裕がある人間と


そうではない人間。


博打での格付けは済んでいる。


どこか違う雀荘をさがす?


でも、わたしの麻雀のチカラで


凌げる雀荘なんて、他にあるだろうか。


とにかく毎日1万円勝てればいいんだ。


それは、別に麻雀でなくてもいい。


楽しくもない麻雀。


きついだけの麻雀。


次の日、私はパチンコ屋の開店に並ぶ。


毎日1万円くらいなら、なんとか勝てるのではないか。


そう思ったからだ。


麻雀が怖かった。


だって、お金を取られるだけだもの。


きっとまた当たり牌を掴む。


ロッキーのテーマが鳴り響き


店の自動ドアが左右に大きく開く。


にぎやかな店内。


麻雀のことばかり考えながら


パチスロのリールを目で追う。







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